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小さきものを愛おしむ

日々思うこと、好きなもの、いろいろ綴る。

一番好きなドラマは「101回目のプロポーズ」だった。

先日「カルテット」について書いた時、今まで好きだったドラマを幾つか思い出した。

そして改めて、私が今までで一番好きなドラマって、やっぱり「101回目のプロポーズ」だよなと思ったのだった。

当時は月9(ゲツク)という言葉も生み出すほど、その枠のドラマはいわゆるトレンディドラマとして大人気であった。「101回目」の他には「東京ラブストーリー」「ひとつ屋根の下」など、知らない人はいないほどの大ヒットドラマを生んだ枠である。

ヒットする要素はたくさんあった。当時一番と言っていいほど美しいというよりカッコいい女優の浅野温子がヒロイン、主題歌がチャゲ&飛鳥(今はもう聴けないね)、そして放送中放たれる粋なセリフの数々。特にヒロインを恋い慕う達郎が振り絞る愛の言葉『僕は誓う、50年後の君を今と変わらず愛している』・・これはヒロインの妹に教えられてまたそれをちゃっかり言うのだが、これは実はヒロイン薫にとってとても大切な言葉だったのに・・とか、『僕は死にましぇん』とか。

その不器用でも一途な達郎を武田鉄矢が演じたことで、その美女と野獣のようなおよそトレンディラブドラマとはかけ離れたような設定がかえって新鮮だったのもあるのか。

また、武田鉄矢が主人公なのでコメディ要素もあり、弟役の江口洋介との掛け合いは江口がカッコいいのに素朴で恋愛に疎くて、けれど兄弟愛は深くてという絶妙なコンビで笑ったり、兄を思う気持ちにホロリときたりで惹きつけられた。

そして先に述べた『死にましぇん』の有名過ぎる場面。その命を張ったような緊張感の中での魂の叫びに、薫のみならず見ている人は泣かされたのかもしれない。

と書いたが、実は私はあまりあの場面は好きではない。『僕は死にましぇん。』って言うけどそんなの誰にもわからないやん、死ぬかもしれないやん、と思ってしまうのだ。でもこの叫びが薫の心を動かすのよねぇ『私を幸せにしてください。』と言っちゃうんだね。それまで心を閉ざして臆病になっていた彼女を開放してくれた言葉だったのかなと思うけど。

 

それより私は、亡くなった彼のお墓の前で達郎が言ったセリフにグッときた。そしてこの場面と、最後の方で薫が語る言葉が私にこのドラマがベスト1と思わせたのである。

感情が高まり訴える言葉は確かに人の心を打つ。だが私は達郎が真壁さんのお墓の前で薫に静かに語ったあのセリフが一番好きだった。『これからもあなたは彼のことを愛し続けるでしょう。そんなあなたの心ごと僕はあなたを抱きしめるつもりです。そして僕は彼に嫉妬し続けるでしょう。でも、だからこそ、もっともっとあなたを好きになるように努力します。』(セリフは実際と違っているかも、全体的にニュアンスでお願いします。でもだいたいこんな感じ)

こんなこと言える男が本当にいるのか?達郎はボーナス突っ込んだり、トラックの前に飛び出したり、ハチャメチャだけの男じゃなかったんだ、と思った。そしてこの時初めて私も達郎が好きになった、それまで鬱陶しいおっさんでしかなかったのに。

恋人でも夫婦でも、心が離れたなどで別れたのでもない限り、相手を忘れてしまうなんて難しいし、辛い事だと思う。でも実際は前の人を忘れて欲しいと願いたいのが人間ではないだろうか。でも達郎は違った、いや待てよ、真壁さんにはとてもかなわないという予防線を張ったのかな?にしても、彼を愛するあなたをそのまま愛したいなんて言えないよね普通。すごく器が大きいのか、はたまたとても臆病なのか。達郎の場合臆病の方かもしれないけど、とにかく薫のことが好きで好きで仕方ないんだ、そんなに愛されてるっていうだけで幸せだよね。

 

そしてもう一つ好きなところとは、薫が藤井さん(前の彼に瓜二つで、プロポーズされて達郎とは別れることになる)に抱いていた幻想に気づき、彼に別れを告げる場面である。説明を加えた方がわかりやすいので、ここからはかなりネタバレになる、これから見ようかなと思っている人は読まない方がいいかもしれない。

 

藤井さんは達郎の上司として赴任してきた。薫とは偶然出会うわけだが、薫の亡くなった彼、真壁さんと瓜二つで、二人は恋に落ち、藤井さんは薫にプロポーズし、薫は達郎と別れて藤井さんと結婚することを決意する。達郎は会社を辞め、二人を祝福しながらも、最後まで諦めないと司法試験に挑戦するも、落ちてしまう。もう本当に不幸を絵に描いたような達郎のキャラである。

薫は藤井さんに恋をした。でも付き合ううちに前の彼との違いをだんだん感じ始め、あまりにも合理的でクールな藤井さんに疑問を抱き始める。奥さんと別れた理由も、嘘をつかれていたみたいだ、それはダメだ、嘘はやはりいけないな。そんな嘘がなければ、藤井さんのように仕事ができる人は、しばしば合理的でありクールに物事を割り切れるものだから、そういう価値観の人と一緒になればいいのかも。でも薫は違った、きっと前の彼、真壁さんも誠実な良い人だったんだろうけど、彼女も恋愛や結婚に誠実さを求めていた。薫は不安になるが、友人の尚人(これがまたカッコいい頃の竹内力で、、なんでこの路線でいかなかったのか悔やまれるが)の言葉で気がつく、自分は藤井さんに真壁さんを見ていただけではないのか。そして彼に尋ねてみる、同じ言葉が彼から聞けたらという期待を持って。そして聞いてみる、『50年後の私をどう思う?』

真壁さんは『僕は誓う、50年後の君を今と変わらず愛している。』と言って薫にプロポーズをした。その言葉は薫の大切な大切な宝物である。(だから達郎がその言葉を発したのは薫にとって衝撃だった、良くも悪くも凄いインパクトを与えてしまったわけだ。)

しかし藤井さんから返ってきた答えは『そんな先のことなんていいじゃないか、今二人が愛し合っていれば。』

やっぱり彼はあの人じゃない、薫は今度こそはっきりと悟って、藤井さんに別れを告げる。

薫は藤井さんに先ほどの言葉の意味を伝え、『あなたは私でなくても良い人なの、でも星野さん(達郎)は私でないとダメだと言ってくれた、言葉だけじゃなくて心から。』と涙を流す。そう、もういつからか、薫はやはり達郎の気持ちに心を動かされていたのだ。きっと随分前からそうなんじゃないかと私は思う、藤井さんに出会う前からかもしれない。でも、自分のそんな本心に気がつかないでいたのだと思う。

藤井さんは、あんなへちゃむくれの良いとこないおっさんに自分が負けるなんてプライドが許さないだろう、薫が好きというより、そんなプライドからムキになって薫に言ってしまうのだと思うが、『君は彼を愛していない!』と薫に迫る。そして薫も『言わないで!』と言う。そこがリアルだな、そう、薫は達郎に恋をしたわけじゃない、ときめいているんじゃない、愛してる、と囁けるわけじゃないんだ。でも

『言わないで、私がバカだったの。愛してくれる人に、精一杯応えてていくっていうもう一つの愛のかたちに気がつかなかったの。』

そう、このセリフが私が好きなもう一つのポイントである。

こんな愛のかたちがドラマになったことある?だいたい恋愛でも結婚でも、好きか嫌いか、どちらか迷っているか、みたいな、自分主体の気持ちで動くのがほとんどだ。

愛されて結婚したとして、愛されている自分を幸せに思うだろうけど、精一杯応えていくって思える人はどのくらいいるだろう。愛もやはり受けるだけじゃダメなんだ、こちらも愛を返さないとね、って気付かせてくれた。

もう一つの愛のかたちーこんな美女と野獣みたいなカップルうまくいくわけないと誰しも思いたいところだが、これは野獣が美女を愛して尽くし抜き、美女が野獣の愛に応えていくというおとぎ話みたいな物語であると同時に、想いは必ず伝わるという希望を抱かせてくれるリアルな恋物語だと私は思う。

やっぱり愛と希望は人生に必要だ、そしてそこに妥協は入れたくない。「精一杯」というキーワードが私の心を豊かにしてくれる、そんな二つの場面を持って、このドラマは私が今のところ一番好きなドラマである。